戸郷が語るだけ

思ったことをひたすら文章化して語ってく

魔女旅のSS(?)作ってみた

なんか滾ったので作りました。

何かとネタ被ってたらごめんなさい。

あとこういうの初挑戦なのでいろいろなんかあれならそれもごめんなさい、

 

一応アニメ範囲外の情報が出るのは題名の前に注意書き。

 

 

【粗暴さんのその後】

 『魔女の旅々』
 そう表紙に書かれた本を閉じて膝に置き、私は前を向きました。

 目の前にはどこまでも広がる緑が生い茂り、さらにその向こうでは赤くなった太陽がこれから山へと吸い込まれていくところです。

 

「他の私も大変な経験をしていたのですね」

 そう独り言を呟きながら私は笑いました。
 本に書かれていた内容の可笑しさが半分、辛いのは自分だけだと自惚れていた恥ずかしさが半分の中途半端な笑いです。

 

 ふわっと冷たい風が草木を揺らし、それらがこすれ合う音が虫の鳴き声と共に心地の良い音楽を演奏します。
 そんな冷たい風は私も包み込み、髪が短くなった分だけ顔や首に直接あたり少し肌寒い気もしてきます。

 早く髪を取り戻さないといけませんね。

 

 ただ、しばらくはそんな少し冷たい風にあたりながら目の前の大自然が奏でる特別な音色を聴いていました。音楽を聴きながら、頭の中で他の私たちがたどった物語を反芻します。

 あの時私はこう考えました。一方で主人公の私はこう考えました。一方で知的な私はこんな考えをしていたようです。一方でアホの私は……

 ……くすりと笑いが漏れ出します。本当に、ありとあらゆる灰の魔女の物語があるようです。

 さてと、もう少しこの余韻に浸っていたいのですが、太陽が完全に沈みきってしまいそうなのでそろそろ旅の続きをしないといけませんね。

 もちろん行先は決まっています。

 

―――「わかっていますよ」

 私の隣に置いてあるほうきがそう呟いた気がしました。
 だとすればさすがいつも私のそばにいてくれただけありますね。私のことをよくご存じで。

 私は膝に置いていた本を大切にローブへしまい、ほうきを優しく握りながら立ち上がりました。

 

 ほうきを走らせても大自然の音楽は私の耳に届いていました。

 こんなにも穏やかな気持ちでほうきを走らせるのはいつ以来でしょうか。

 

――――――――――――――――――――――――

 あの日から何日もほうきを走らせ、目的地に着きました。
 厳密にはこの扉の向こうが目的地なのでまだついていませんけどね。

 

 その扉を前にして一度大きく深呼吸をします。
 ノックをしてしばらくするとその扉はゆっくりと開かれました。

 中からはすっかり痩せてしまった魔女が顔をのぞかせました。

 

「お久しぶりです」

「あ、イレイナさん。ごめんなさいね散らかってて

……髪、切った?」

 

 まずは私のトラウマと決着をつけましょう。

 そして助けましょう。心にぽっかりと何かが開いてしまった薄紫色の髪をした彼女を。

 

【バカでアホなIF】

 それは粗暴な私とのあれこれが終わり、粗暴だった私と仲良く談笑しているときでした。

 談笑している向こうには偽乳の私……が2人もいますね。何をしているのでしょうか。
 というかなんで2人も偽乳がいるんですかそんなに私の体が貧相ですかそうですか。

 

「あら~? あなたのその胸は何かしら?
綿でも詰めているのかしら~?」
ツンツン フニ
「やめてくださいっ
詰め物なわけないじゃないですか!」
「……」

 

 その後、粗暴な私がもう一人誕生したのは言うまでもありません。

 

 

【バカでアホなIF2-1】

 それは粗暴だった私と協力して新・粗暴な私をなんとか制圧した後、仲良く談笑しているときでした。

 談笑している向こうでは何か2人の私が言い合いをしているようでした。
 また変なトラブルになって粗暴な私が量産されても困るので聞き耳を立ててみましょう。

 

「シレ×フラが至高
そもそも性格的にフーラが先に来るのはあり得ません!」
「わかっていませんね。誰が何と言おうがフラ×シレが最高なんです
いざその時になってシレンが弱気になりフーラが強気になって2人の性格が逆転する!
このシチュのよさがわからないんですか!」

 

 ……なっ仲がよさそうで何よりで。
 もう少し小さな声でやっていただきたいのですが。

 

「何を言い争っているのでしょうか?
ニケの冒険譚の話をしているようですけれど」

 そう首を傾げながら歩き出す粗暴だった私の手を握り止めました。

 

「あなたはこっち側にいてください……」

 

【バカでアホなIF2-2】

 それは粗暴だった私と協力して新・粗暴な私をなんとか制圧した後、仲良く談笑しているときでした。

 談笑している向こうでは何か2人の私が言い合いをしているようでした。
 また変なトラブルになって粗暴な私が量産されても困るので聞き耳を立ててみましょう。

 

「シレ×フラが至高
そもそも性格的にフーラが先に来るのはあり得ません!」
「わかっていませんね。誰が何と言おうがフラ×シレが最高なんです
いざその時になってシレンが弱気になりフーラが強気になって2人の性格が逆転する!
このシチュのよさがわからないんですか!」

 

 ……なっ仲がよさそうで何よりで。

 もう少し小さな声でやっていただきたいのですが。

 

「何を言い争っているのでしょうか?
結局はニケ×フラかニケ×シレのお仕置きシチュが至高なのだから無駄な争いですよね」

 そう首を傾げながら歩き出す粗暴だった私の手を握り止めました。


 
「あなたはこっち側にいてください……」

 これ以上余計な火種を増やさないでください……

 

【想像は想像でしかないということ】

 私は日記を読み返しながら、あの日のことを思い出してしまいました。
 人々の幸せを見たあの奴隷の少女のお話を。
 そしてその少女に会った日に思い出した昔読んだ本の結末を。

「……今日はもう寝ましょうか」

 

―――翌日

「エミルくん! 次あれ乗りたい!」
「おーいいね。行こう行こう」
「えへへ……ありがとっ」

「いーよいーよ。ニノちゃんが楽しければ」

 

「……??」
「イレイナさーん!

ぼく次あの水がばしゃーってなるやつ乗りたいです!」

 

【釣り】

~サヤ・ミナの場合~

「ミナどれだけたくさん釣るの?」
「姉さんにはたくさん食べて大きくなってほしいから」
「……」

 もしかしてぼく子ども扱いされてます?
 お姉ちゃんなのに?

 

 もう。ぼくはじゅうぶん大きいですよとぷんすかしているとミナがまたまた一匹釣り上げました。

 少し緑がかっていておでこが特徴的なお魚です。

「……??

始めて見るわ。姉さん、知ってる?」

 妹はその魚がなんなのかよくわかっていないようです。

 でもぼくはその魚が何なのか知っています。

「師匠です」

「そう。伝えておくわ」

「やめてくださいお願いしますなんでもしますから」

「!!」

 なんでもするとは言いましたがミナが無理難題を要求してきたので断ったら師匠に報告されました。

 その後どうなったかはご想像にお任せします。


~フラン・シーラの場合~

「タバコを海にポイ捨てしてはいけませんよ」(ツリアゲー

「しねぇよ……」

「知っていますか?

シーラカンスという生きた化石と呼ばれる魚がいるのですが、今時タバコを吸うシーラはまさに人間界の生きた化石ですね」

「うるせぇよ

この前だって弟子が釣ってきた魚がシイラって名前らしくてイジられたばっかなんだからよ」

「あら、仲がいいのですね」

「おう。仲良しの印にちゃんとあたしとの接し方を教え込んでやったぜ」(ツリアゲー

「あなた凄くいい笑顔しますね」

 

 しばし沈黙。

 

「てか、なんで急に釣り?」

「とあるパイが食べたいなと思いまして」

「いや、パイと魚ってかなり遠いだろ」(ツリアゲー

「イレイナがオススメしてくれたので美味しいこと間違いないですよ」(ツリアゲー

 

~イレイナの場合~

「うっふふ~今日も大漁ですね~
これだけあればしばらく生活には全く困りませんね~」

 いや~賢くて魔法も凄くて可愛いのに釣りまで一流だなんてもう向かうところ敵なしですね。

 と思ってる間にまた一匹釣れました!

 

「あの~すみません」

 そう話しかけてみるとなんと釣れたお魚が手帳を見せてくるではないですか。
 この国のお魚は身分証を持っているのですね。

 

「これ見ての通りボクはこの国の警察なんだけどさ
最近この辺でお金をわざと落としてそれを拾った相手から高額な示談金を恫喝してくる怪しい魔女がいるって聞いてね
おとり捜査……って大げさなものでもないけどここで調査してたんだよ」

「へっへぇ~それはこすいことをする魔女がいるものですね
わっ私も気を付けます~」

 逃げようとする私の肩をおまわりさんがガッと掴みます。

 

「いや、それ君でしょ? 丁度このタイミングで話しかけてきてさ
まっいいや。とりあえず署でお話聞こうか」

 

 どうやら私の方が釣り上げられてしまったようですね。

 

 

※以下、アニメ範囲外注意

 

 

※4巻読破後推奨

【ベン・Kの刀狩】
 俺様の名前はベン・K。
 とある国のとある橋で刀狩りをするのが趣味の男だ。

 これまで狩ってきた刀は3本。最近(ここ400年)は規制が強く刀を持つ人間なんてそうそう現れない。
 もうこの際刃物なら何でもいいやと思って買い物帰りの主婦や学生から包丁やハサミなんかも狩ってきたが当然達成感はない。てか数回捕まった。

 

 仕方ないから(し「刀無い」。なんちゃって)俺様は近くの剣道などという武道の道場やふぇんしんぐなる場所に足を運び剣技を磨き上げてきた。

 ただ俺はやはり、あの血肉躍る命を懸けた真剣のぶつかり合いを再びしたい。そう期待しながらこの橋で刀を持つ剣士がくるのを待っていた。

 

 そして今日、ついに。ついに刀を持つ者が現れた。
 遠くにいるが間違いない。刀だ。匂いで分かる。こんな千載一遇のチャンスに俺は期待を膨らませる。
 2人いるうちの片方が刀を持っている。もう片方は魔法使いだろうか。ほうきを持っている。
 関係ない。俺は魔女ともやり合ったことがある。魔法使い相手の戦い方もわかっている。当然複数人相手の戦い方もお手の物だ。

 

 その影がどんどんと俺に近づいてくる。

「女……?」

 魔法使いはともかく剣を携えた女など珍しい存在もいたものだ。
 いや、関係ない。刀を持つ者などまたとないかもしれぬ好機。絶対に狩る。

 そう思い俺は刀を手にかけた。


 その瞬間、刀を持つ女からの一瞬だけだが強い視線を感じて俺は刀から手を離した。

 それと同時に脳内に彼女が俺を一瞬で切り捨てる映像が流れた。

 

 こいつ、間違いなく強い。
 その後脳内で何度も何度も斬り合ったが勝つビジョンが思い浮かばない。それどころか彼女の太刀筋すら追えるビジョンが見えない。
 こんなことはこれまでなかった。
 あの剣豪を倒したときも、あの魔女を倒したときも、こんな感覚はこれまでなかったことだ。

 なのに、あんなただの少女がそれらを上回るというのか……??

 

 汗が額を流れる。剣道もやった。ふぇんしんぐもやった。その他にもなんかいろいろやった。なのに俺は直感でこいつに勝てないと悟った。
 だらだらと、気持ちの悪い汗が体を上から下へとつたっていく。

 気が付いたら俺は刀から手を放していた。

 

 そしてその女が俺の隣を何事もなかったかのように素通りしていく。

「それで美味しそうだったので買って食べてみたらクリームが凄くて顔に……
……あれ? お姉ちゃんどうかしたのですか?」
「んー? なぁに急に。なんでもないよ
それで? 顔についたクリームがどうしたの?」

 

 すれ違いざま。可憐な声でその女は話を続けていた。
 俺は振り返ることもなく、ずっとそのまま立ち尽くしていた。

 

 

※7巻読破推奨

【おりんぴあんのシャロン様】

 ある日ある国のカフェで新聞を開くと、そこにはこの近くの国であった大きな総合スポーツ大会の記事が載っていました。


 安全性や公平性の面から見てスポーツでは魔法がそもそも禁止、または使用できる範囲が制限されていることが大半です。
 しかし今見ているものは魔法を好き勝手使っていいとてもデンジャラスなルールとなっており魔女すら怪我なしで終われないと言われる非常に危険なものでした。

 

 そんな競技の優勝者の欄には私が知っているとある少女の名前が書かれていました。
 いえ、彼女は魔法使いですらないはずなので恐らく同名の方なのでしょう。

 

 ただ、もし私が知っている方でしたら青い髪をした少女なのでしょう。
 恐らく、彼女はしたり顔で表彰台の頂点に立ったのでしょう。
 そして冷汗をかきながら、内心困惑しながらもはた目からは堂々とこの新聞に書かれたインタビュー内容を答えていたのでしょう。

 

 有り得ないと否定できないのがシャロンさんの恐ろしいところなのですが。

 


※9巻読破推奨

王様ゲーム

 今日はちょっとした臨時収入があったので、わたしはお姉ちゃんに何か面白い物でも買おうかとこの街の商店街を歩いていました。

 しかし旅人としていろんな国を見てきたわたしにとってこの商店街は失礼ながらあまり目新しいものは見当たりません。

 

 もうこの際何でもいいやと思い一角にあるこじんまりとしたお店になんとなく足を踏み入れると中には店主と見られる無精ひげをはやしたおじさんが奥の方で一人だけで暇そうに椅子に座っていました。
 周りを見渡す限り安価なお菓子やオセロのようなゲームを売っているお店のようでした。

 

 店主のおじさんはわたしを見るなり退屈そうな顔がパーッと明るくなりわたしに近づいてきました。
 立ち上がった時の余りの勢いに座っていた椅子が音をたてて倒れます。

 そのあまりの勢いに思わず一歩引いてしまいましたが、おじさんはすぐにわたしの目の前に立ちました。

 

「おっこんな時間にお客さんだ!
それもカワイイお嬢ちゃんじゃないか

うーん。そうだ! せっかく来てくれたんだしちょっと面白いゲームをやっていかないかい?」

「ゲーム。ですか?」

 周りを見ると様々なゲームがあります。
 有名なものから見たことすらないようなものまで。

 ここならお姉ちゃんを喜ばせることができるようなゲームが眠っているかもしれません。

 

「あっせっかくだからそこ座って。このお店自慢のゲームコーナー
このお店のゲームならこれだけのスペースがあれば何でもできちゃうんだ
あの扉の向こうには畳の部屋もあってそこでも遊べるけどね

まっまあ今はお客さんいないから……ここくらいしか使わないけど……」

 そう促されるまま指さされた場所には普通の机と普通の椅子が数席用意されているこじんまりとしたゲームコーナーがありました。

 とりあえず、促されるままにその一席に座ると机をはさんだ向かいにおじさんが座ります。

 おじさんはその綺麗で白い歯をのぞかせながら話し出します。

 

「で、やるのは王様ゲーム
「おうさまげぇむ」

 わたしはおじさんが口にしたゲーム名をそのままリピートします。

 なんだかいい響きなのです。

 

「そうそう王様ゲーム
ルールはいたってシンプル。ここに普通の棒と先っぽが赤くなっている棒。二本の木の棒があるだろう?
僕はこれをシャッフルする」

 そう言いながらおじさんは木の棒をくるくるとすり合わせました。
 木がこすれるじゃこじゃこという心地のいい音が静かな店内に響きました。

 

「はい。片方引いてみて」

 おじさんに促されわたしは一本。左側にあった棒を引き抜きます。
 色はついていません。普通の棒のようです。


「はい。ということは色付きの棒は僕が持っているから僕が王様だね
王様は王様以外の人になんでも命令ができるんだ」

「なっなんでもですか!?」

 ということはわたしはこれからあんなことやこんなことを……
 ダメですわたしにはお姉ちゃんという……と混乱しているとおじさんは「ハハハ」と笑いながら。

 

「命令なんてしないしない。でも世の中にはこういうお遊びがあるんだよ
シンプルだけどドキドキする。楽しいだろう?」

 と言いました。
 その後指をパチンとならし、話を続けます。

 

「で、面白いのはここからなんだ
棒を返して」

 そう促されおじさんに返すとおじさんは再びジャラジャラと棒をすり合わせ再びわたしの前に引けと言わんばかりに突き出します。
 引いてみるとまた普通の棒。せっかくの臨時収入があってついていたと思っていましたが二連続で外れとはついてないようですね……

 でもこれ命令をしないのであればいったい何が面白いのでしょうか……

 そう思うわたしとは対照的におじさんは楽しそうに続けます。

 

「あちゃーまーたダメだったね
もう一回やってみよう!」

 そう言われおじさんと何度もこのやり取りをしました。
 しかし何度やってもにわたしは赤い棒を引けません。

 最初は「もっと面白いゲーム持ってこねぇとこんなんじゃお姉ちゃんが楽しめねぇですあぁん?」とグレた心を持っていましたがだんだんこのおかしな状況に首を傾げます。

 

「お嬢ちゃん運が悪いね~
あっちなみにちゃんともう片方は赤い棒だからね!」

 そう言っておじさんはもう一本の棒を見せます。
 棒の先はちゃんと赤色になっていました。

 

「ハハっこれが本当に命令ありの王様ゲームだったらお嬢ちゃん僕の言うこと10回は聞かなきゃいけないね!
お願いできるとしたらお嬢ちゃん可愛いから店前に出てこの誰も来ないお店にお客さん呼んでほしいんだけど……

あー冗談冗談。おじさんの戯言を本気にしちゃだめだよ」

 おじさんはそう言いながら笑いました。
 しかしなんとも解せません。これだけやって外れを引き続けるのは何かからくりがあるに違いありません。
 持ってる棒を入れ替えたりなんかもしていません。おじさんが実は凄腕のマジシャンなら見落としているかもしれないのですが……

 それとも未来が見えるのでしょうか? わたしがどちらを引くのか心が読めるのでしょうか? いえいえ。そんなことできるわけがありません。

 

「いったい何がどうなっているのですか?」

 自分が持つ棒を端から端までじろじろと見ても何の細工もありません。
 魔法使いのわたしが見ても魔法が使われているような形跡はありません。

 

「ふふんっそれはね」

 そう言いながらおじさんは自らが持つ棒の先をにぎると軽く引っ張りました。
 そうすると赤い棒は普通の棒と赤いキャップに分かれます。

 

「実はこれは赤く塗ってるんじゃなくてただのキャップでこうやって抜けるようになっていたんだよね!

だからお嬢ちゃんが僕から引く時、赤い方を選んでいても僕がこういう感じに握っておけば……ほら抜いたときに一緒にキャップもとれちゃうから絶対に赤色の棒は引けないようになっていたんだ!
ほら見てみなよ。近くで見ても色が塗ってあるかのように見えるだろう? 僕の自信作!

 

あっその顔はしょうもないと思ってるな!
ハハハ! 正解その通り! 無駄な時間使わせちゃったね!
お詫びにえーとこのお菓子とこれとこれと……
そうだ! せっかくだしこの棒とキャップもプレゼントするよ!
おじさんの暇つぶしに付き合ってくれてありがとう!
お金? いらないいらない!
僕がイカサマしなければ実はお嬢ちゃんの方が赤い棒を沢山引いていたからね!

王様への献上品ってやつだと思って受け取ってくれ」

 そうおじさんは笑いながら袋いっぱいに詰まったいくつかのお菓子と棒と赤色のキャップをわたしに押し付けてきました。

 

 その後わたしが店から出ると入れ替わりで小さな子供が数人「おじさん遊ぼう!」などとそれぞれ楽しそうに騒ぎながらお店に入っていきました。
 どうやら近くにある学習塾が終わり子供が外で遊びだすこの時間帯。これからが賑やかになるお店のようです。

 私はさっそく元気な声が響く店の方をちらりと振り向いてから帰路につきました。

 

 さて、それはそうと。

「なんでも命令できる……ですか」

 フフフ。これがあればお姉ちゃんにあんなことやこんなことを。
 いやーこれは素晴らしいものを手に入れてしまいましたよ。

 

~アヴィリアの妄想~

『お姉ちゃん! わたしに(ご想像にお任せします)するのです!』
『ははーアヴィリア様ー』

~妄想終~

 

 フフフフフフ………

――――――――――――――――――――――――

「ただいまです!」

 わたしが宿の扉をあけるとお姉ちゃんは先に帰って剣の手入れをしていました。

 

「おかえり~
なんだかやけに機嫌がいいわね~」

 お姉ちゃんはそう呑気に返事をします。この後あんなことやこんなことをされるなんて思いもしていないでしょう。

 さっそくそんな呑気なお姉ちゃんに近づき、目の前に座ります。

 

「おっお姉ちゃんゲームをしませんか」

「何急に
どんなゲームをするの?」

 

「その名もずばりおうさまげぇむです!
ここに二本の棒があると思いますがわたしが持っているのでお姉ちゃんは一本引いてください
先が赤い方を引ければお姉ちゃんはわたしになんでも一つ命令ができます!
逆に引けなければわたしはお姉ちゃんになんでも命令できます!

わたしがシャッフルするのでその後引いてください

ではかき混ぜて……

 

さぁ~あどうぞ! お引きください!」

「わぁ~重たいゲーム
うーん。勝ったら何をお願いしようかな~
まあいいや。片方引けばいいんだよね?」

 そう言いながらお姉ちゃんは赤色の棒に手を伸ばします。
 しかし、残念ながらお姉ちゃんが引くと同時に赤色のキャップが外れ、お姉ちゃんが引ききる頃には何ともないただの棒になりました。

 

「あっ外れだ」

 フフフ……これでなんでも命令が……

 いや、しかしお姉ちゃんを好き勝手できる……

 なんでも、なんでも……

 

「アヴィリアはわたしに何の命令をするの?」

 なっななななんでも……なんでも……

 

「はーやーくー
どうしたのー?
アヴィリアー? 聞いてるー?」

 ななななななななななな
 あああああああああああああああああ!!!!!!!

 

「えっちょっとアヴィリア大丈夫!? 顔真っ赤だけど!?」

 お姉ちゃんが焦りながらわたしの肩を掴みます。
 ああ、目の前がお姉ちゃんでいっぱいです。


 幸せなのです。

 

「きゅぅ」

 

――――――――――――――――――――――――

 いい匂いで目が覚めるとお姉ちゃんが向こうで何か料理を作っていました。
 お姉ちゃんがかけてくれたであろう布団から出ると物音で気付いたのかお姉ちゃんはこちらを向きました。

 

「あっよかったー起きて
大丈夫?」

「はい……」

「本当に大丈夫なの?」

「だっ大丈夫なのです
あれはちょっと……その……とにかく大丈夫なのです」

「そっかー。ならよかった~
急に顔真っ赤にして倒れちゃうんだから本当にびっくりしたんだからね~

それとこれ」

 そう言いながらお姉ちゃんは外れたキャップと木の棒を見せてきます。
 それを何度も抜き差ししながら話を続けます。

 

「これキャップになってたんだねー全然気づかなかった
言われてもわかんないもん」

「ごっごめんなさい……」

「怒ってないって~ちょっとしたドッキリでしょ
でさ~アヴィリア。キャップがあの場落ちてたってことは本当は赤い棒を引いたのはわたしなんだよね?

じゃあアヴィリアになんでもお願いできるんだよね~」

 お姉ちゃんはニヤニヤしながらそう言ってきました。
 イカサマをした手前、返す言葉もありません。無条件降伏です。

 

「煮るなり焼くなり好きにしてくださいです」

「うーんじゃあ明日はお仕事お休みでしょ?
命令は明日はわたしと一日中一緒に遊ぶこと!

久しぶりに姉妹でゲームしてみるのも面白いかなーって思ってね~」

 お姉ちゃんは笑顔でそう命令をしてきました。
 だからわたしも笑顔で返しました。

 

「わかりました」

 ―――丁度いい場所を知っているのです。
 と付け加えて。

 

 

 

 

※18巻読破推奨

【イジワルがしてみたいイレイナさん】

 ある日ある国の大通りを歩いているとミナさんを見かけました。

 私はその真後ろまで近づき声を掛けました。

「ミナさんミナさん」
「びっくりした……
というよりイレイナ。そんなに近づかれると気持ち悪い……」
(ほう。やはりあの時のは聞き間違いではなかったですね
近づいて確認したかいがありました

 

ちょーっとイタズラしてみたくなっちゃいました
そんな小悪魔な魔女はいったい、誰でしょう
そう、私です)


「実は今日これからサヤさんとご飯を食べる約束を」
「同行するわ」

 

――――――――――――――――――――――――

「イーレーイーナーさーーーーん!!!!
いやー今日も変わらずお美しい……ってミナ! こっち来てたんだ!」


「姉さんこそ来ていたのね
相変わらずイレイナと仲が良さそうで何よりだわ」(ピキピキ


(ん? 今ミナがイレイナさんの事なんと?
いーやそんなわけないですよね聞き間違いですよね
ぼくの妹とぼくのイレイナさんがそんな仲だなんて

えーそんなことになってたら脳が破壊されちゃいますねー)


「ええ。つい先ほど偶然会って驚きました
もしサヤさんさえよければミナも一緒にどうかなと
ねっミナ」(ダキツキー

「(°Д°)」

「ちょイレイナ何なの急に……」
「(°Д°)」

 

――――――――――――――――――――――――

「もーびっくりしたじゃないですかー

脳が破壊されるかと思いましたよ」

「ごめんなさい

サヤなら面白い反応を見せるかと思いまして」

「(°Д°)」

「姉さんをからかうのはやめなさい」

 

「もーほんとイッイレイナは……」(だんだん小声になる)

「姉さん自爆するのはやめなさい」